【アート・美術】スピリアールト《待つ女》

ごきげんよう。

 

城牙咲くらは(じょうがさき・くらは)です。

 

「誰かを待っている女性」は、やや古風な主題ですが、古今東西で用いられてきた主題です。

 

日本の流行歌だけを見ても、都はるみ涙の連絡船」(1965年)、二葉百合子岸壁の母」(1972年)、八代亜紀雨の慕情」(1980年)を始めとして、枚挙にいとまがありません。

 

しかし、概ね共通しているのは、「半ば諦め、期待していない」ということです。

 

「涙の連絡船」では誰とも知れぬ一夜の恋の相手を、「岸壁の母」では戦地に徴兵された息子を、「雨の慕情」では愛憎入り混じった別れ方をした恋人を「待っている」のです。

 

今日ご紹介するのは、ベルギーの港町オーステンデの画家レオン・スピリアールト(Léon Spilliaert, 1881-1946)の作品です。

レオン・スピリアールト《待つ女》、墨汁・チョーク・水彩・紙、1908年

この絵の具体的な物語は分かりませんが、画家が港町出身であることを考えれば、先ほどご紹介した流行歌の女性達のように、半ば諦めながら「待っている」のかも知れません。

もう一つ考えるヒントがあるとすれば、スピリアールトは、生前に『青い鳥』でノーベル文学賞(1911年)を受賞したモーリス・メーテルリンク(Maurice Maeterlinck, 1862-1949)の詩集『温室(Serres chaudes)』をテーマに絵を描いてきたということです。

この『温室』という詩集には、「待ちぼうけ」« Attente »という詩が収録されています。

僭越ながら、僕の翻訳でお送りいたしましょう。

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「待ちぼうけ」

我が魂は、その奇妙な両手を合わせた
我が眼差しの遥か彼方に向かって
我が夢を叶えて下さい、それらは撒き散らされ
貴方の遣いの天使達の唇の間に御座います!

疲弊した我が眼の下で待ちながら
そして、祈りの言葉を唱えて口を開くも
その祈りは、我が瞼の間で消え入りそうで
そして、我が魂の百合は、その花を開かない

我が魂は、我が夢想の奥底で、癒している
我が睫毛の陰で花弁を毟られたその乳房を
そして、我が魂は、流し目を送っている
嘘を吐くにつれ目醒める危険の方に

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モーリス・メーテルリンク『対訳 温室:他全詩集』(デザインエッグ社)

『青い鳥』でノーベル文学賞を受賞したメーテルリンクのデビュー作『温室』および他の詩を全て集めたのは、世界初です!

表紙の絵も僕が描いた油絵です。

是非、メーテルリンクの幻想的な世界をお楽しみ下さいね。

城牙咲くらは

Twitter: @claha_jyogasaki

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